私の好きなインドネシアインドネシアで働いて(index)

第六話 事件(2) 日本領事館での憂鬱

私の駐在期間中の肩書きは営業・業務課長となってましたが、事務方全般のお仕事も手伝ってました。日本大使館(領事館)へのビザの申請もお手伝い仕事の一つです。

誰の為のビザかと言いますと;

(1) 日本の親会社にインドネシア人を出張させる際に必要となる日本入国ビザ

(2) インドネシアの業界人が日本へ渡航する際に必要となる日本入国ビザ

インドネシアの一般庶民にとって国外への旅行なんてのは、夢のまた夢といった状態でしたので、パスポートをもっている人は私が勤務してた合弁会社の中でもごく一部でした。業務打合わせの為に、アシスタント・マネージャ クラスの人を日本へ出張させようとすると、まずはパスポートの申請からでしたね。

それから、日本大使館での審査がとても厳しいんです。

(a) 詳細な日本での業務日程・内容
(b) 勤務先(合弁会社)からの身分・費用保証書
(c) 渡航先(親会社)からの召喚状

以上をそろえて、本人と一緒に領事館へ行くのですが、係員の方から根掘り葉掘り質問されました。

領事館の受付室には、私達のほかにも沢山のインドネシア人達がビザ申請の為に来てました。常に10人~20人くらいはいたと思います。みんな、ずっと順番を待ってます。

駐在している間にこんな事件がありました。

ある日私は社長に呼び出されたのですが、社長曰、
○○君、A氏(現地業界団体の人物で日本出張予定者)がビザを申請しに日本領事館へ行っているんだが、どうも領事館でトラブルが起きているようだ。今、本人から助けに来てくれと電話があったので、君、すぐにいって領事館職員と話しをつけてきてくれ。とのこと。

A氏は弊社の招待で、日本に渡航することになっており、書類上の不備は絶対にないはずなんですが、とにかく領事館へ行ってみました。

A氏は領事館の受付室で私を待ってましたが、彼から話しを聞いて、私は驚いてしまいました。 なんと、A氏は今回の招待には関係ない自分の同僚のビザも一緒に申請して、取ろうとしていたのです!

私:Aさん、こりゃ無理だよ。あなたの同僚は招待者のリストに載ってないんだから、この案件にかこつけて、ビザを一緒にとろうとすれば、駄目って言われるよ。

A氏:私の同僚は、同じ時期に別の会社へ出張する為に日本へ行く必要があるんだ。ビザ申請の書類も間に合いそうもないし、何とか私の分と一緒に取れるように領事館の職員に頼み込んでくれ!

こんなの絶対に無理なので、A氏を説得しよとするのですが、なかなか納得しません。このままだと、A氏自身のビザも下りなくなってしまいます。なんとか、職員にはなしてみるからとA氏をなだめて、領事館職員(日本人)に事情を説明しました。いずれにせよ、A氏の同僚のビザについては、諦めてもらうしかないのですが。

しかし、職員さんの私を見る目は、まるで不法就労者斡旋屋でも見ているかのようで、居心地がとても悪い。A氏の同僚のビザについては、誤解があって一緒に申請したので、無視してほしい。と頼み込んだのですが、なんで関係ない人のビザまで申請したんだ?とネチネチ聞かれ、針の筵の上ですよ、これは!

ようやくA氏のビザのみOKがとれて、一安心。A氏にはとにかく、招待されてない人のビザは絶対に駄目と言って、大使館を後にしました。でも、A氏からは恨めしそうな目で見られるし、これも気分悪い!

インドネシアの人達って、時々こうゆうやり方で物事を頼んでくるのですが、駄目でもともとって気持ちがあるんでしょう。でも、領事館でいきなりこんな申請書類を出せば、クレームがついて当然です。領事館員が見落として、一緒にビザが降りるとでも思ったのでしょう。でもね、彼らの気持ちも解らないでもないんです。とにかく、ビザの認可は厳しい状況なんですよ。 また、窓口でインドネシア人の申請者に応対している職員の態度を見ていると、かなりソンボン(インドネシア語で傲慢・尊大)な感じがするし。(一方、職員の気持ちも想像つくんです。でたらめ、いい加減な申請書を持ってくる連中が多くて、その対応で忙殺されてるのかもしれない。)

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